何かとトラブルが発生する夏の水槽。
その原因の根源は、高水温にあります。高水温による副次的なトラブルも当然発生します。
また漫然と管理していると見落としやすい、季節ならではのトラブルも有りますので、一度トータルチェックを行い、夏本番に備えましょう。
夏によく起こるトラブルとしては・・・
- 濾過能力のダウン 高水温時は濾過を行うバクテリアも活動が鈍る為、結果として濾過能力がダウンします。
- 水の腐敗 濾過能力のダウンから食べ残しや、魚の排泄物等が濾過され、無害な物質に変わる前に腐敗してしまい、水質の悪化を招きます。
- 酸素量の低下 水温が高いと水の中に溶け込める酸素が減る為、エビや魚が酸欠気味になりがちです。また酸素量が少ないと、有効なバクテリアが十分に働けず、結果として、濾過能力のダウンにも繋がります。
- 高水温自体による影響 水草の中には水温が高いとそれだけで成長が鈍り、最悪枯死してしまう種類も有ります。濾過能力が低下している為、草が枯死したものが上手く分解されずに腐敗、さらに水質が悪化し…と言う悪循環も起こります。
- 器具のトラブル 特に多いのが蛍光灯のトラブルです。高温対策としてガラスフタを外すことにより湿気に直にさらされたり、高温そのものによる電気的な故障等が発生しやすいのもこの時期です。
- 水道水の質の悪化 夏は雑菌の繁殖を抑える為、地域によっては水道水にかなりの量の塩素が投入されることになります。塩素の中和が不十分な水で水替えをした為に、かえって魚やエビの状態が悪化してしまうと言った本末転倒な事態が発生しがちです。
(1)〜(3)は、どれも高水温(4)を発端としている為、たいていの場合は複合的に発生し、一旦発生すると連鎖反応的に次々と悪化していくことが多いです。またコケの仲間の中には水草よりも高水温に堪えうるものが多く、水草が調子を落とし、余剰気味になった栄養を獲得して一気に増殖するなどの危険性もあります。
(6)については見落とされがちな盲点で、水替えをしても状態が悪い→さらに水換え頻度を上げる→さらに状態が…と言ったことになりかねません。
対策は?
濾過能力のダウンには・・・
水の腐敗を防ぐには・・・
餌の量を少なめし、食べ残しが発生しないようにするのが第一歩。他の要因も絡んで魚の食欲が落ちることがあり、定量通りの餌の量でもあまってしまうことがあります。また給餌量が減ることにより排泄物の量も減り、結果として濾過能力への負荷を減らすことも可能です。また生体用の各種添加剤を使用して、食欲を促進するのも効果的です。痩せ易い魚を飼っている場合や、魚の量が多く餌の量を少なくするのが不安な場合はこちらの使用も効果的です。
酸素量の低下には・・・
エアーレーションは水槽の上下の水の入れ替えを促進すると共に、泡がはじける時に多少なりとも水温を逃がしますのでそれ自身が水温を下げる効果を持ちます。泡の上がり口に、風を当てることによりファンの効果をより高めることも可能ですので、併せての使用がより効果的です。
また水温が高いと水の中に溶け込む酸素量が減ります。夏の魚やエビの死亡は、酸欠が原因となっている場合もありますので、生体メインの場合は常時、水草水槽でもタイマーを使用し消灯時はエアーレーションを行う方がお勧めです。
エアーストーンは数多く有りますが、お勧めはいぶきのセラミックエアーストーン。陶器製で重量が有り、強いエアレーションをかけても水槽内でストーンが跳ね回ることが少ないです。スポンジフィルターも併用し、濾過能力の改善も試みるのも効果的。フィッシュレットは大型・肉食魚のキーパーには定評のある、エアレーションで駆動する排泄物収集器。食べ残しの除去に効果的です。
高水温自体による影響には・・・
難種と呼ばれるものや、高水温を嫌う種類でも水上化すれば、何の問題も無く夏を越せるものも有ります。特に有茎草には水上<=>水中の移行が容易な種類も数多くありますので、トリミングした残りを屋外の鉢で水上化し、万一の際の保険として備えておくのも一手です。また水上化した草の多くは花も楽しめます。
ここまでのトラブルは高水温が原因となるものですので、水槽用のクーラーやファンを使用すれば防げるものが殆どです。水草・エビの人気の高まりに伴って、クーラーやファンは冬場のヒーターと並んで、必須品とも言えるものになりました。
ファンであればヒータと比較して、消費電力も少なく逆サーモと組み合わせれば、水位の低下以外には特に気を使う必要がありません。またクーラーは殆どの機種がヒーターとの接続も可能で、通年設置し水温の管理を一元化することも可能ですので、毎年多忙で、夏・冬の設備の切り替えが遅れがち…と言う人にもお勧めです。
暑さが原因なら冷やすのが一番。と言うことで、やはり冷却ファンやクーラーの用意がお勧めです。勿論、上に挙げた各対策と平行して行えば、より効果的であることには間違い有りません。
エアーレーションとの併用が効果的なことは前述しましたが、送風口を水の流れのある所(フィルターの排水口付近)にセットするのも効果がありますので、設置の際にはこの辺りも考慮してみてください。
器具のトラブル
照明はルーバー付きのタイプであれば、湿気が直接灯具部分に当たることが無い為、ルーバー無しのタイプよりも湿気に対する耐性が有ります。また水面から蛍光灯までの距離を簡単に調整できる、クリップ式のタイプの蛍光灯も夏季には効果的です。
またキャビネットタイプ等の通気性の悪い台に、クーラーや照明の安定器を入れる場合は熱のこもりすぎに注意。場合によっては過度の負荷が掛かり、製品寿命を縮めることにもなりかねないので、クリップ式の扇風機や、余った水槽用ファンを使用してキャビネット内と外部の空気の入れ替えを促進しましょう。
水道水の質の悪化
夏季の他、地域によっては雨天や、雨天が予想される場合も塩素が多めに投入されることがあると言われます。コロライン等で塩素を中和した後、塩素テスター等で、残留塩素が残っていないかをチェックしましょう。
塩素中和剤と同時に、粘膜保護、白にごり除去、水道水に含まれる重金属の無害化を一度に行うことのできるお手軽さから人気が高いのがエーハイムの4in1です。
またより確実を求めるのであれば、浄水器の導入が効果的です。
上記3つのトラブルは季節ならではのもので、上手く管理されている水槽程、盲点となりやすい点です。
番外編・落雷などによる停電・破損
夏、最も怖いものの一つがこれでしょう。特に室内用のエアコンを利用している場合、停電復旧後、自動的に立ち上げが行われない為、家に帰って見ると定温で維持されているはずの室温は30度以上、水温は・・・と言った恐ろしい事態にもなりかねません。
また落雷の影響で、基盤などが破壊されると修理に多大な時間がかかり、最悪は買い替えが必要になることも…。
各電力会社が提供する落雷情報を最大限活用してお住まいの地域に雷雲が近づいている場合は、予めコンセントを抜き、落雷による破損を避けましょう。
夏の必須器具・冷却ファン
水槽用のクーラーに比べると10分の1以下の値段で買えるファンですが、効果に関してはかなりの物が見込めます。
部屋の空気に流れがある方がより効果が見込めます。
ただし水の蒸発が激しくなる為、水位の低下にはご注意!逆サーモと組み合わせれば冷え過ぎや、水の蒸発も抑えられるのでお勧めです。
ファン4機種の比較です。
4機種中、唯一明るい本体カラーのファンです。固定部分はオールガラス水槽でも使用できる樹脂製になっています。
同型の冷却ファンはこちら
手軽で高い効果!ライトリフト
夏の高温対策としては既に定番となった感のあるリフトアップ。
蛍光灯から発する熱を水槽に伝わりにくくすると共に、フタとライトの間にこもる熱を低減、また冷却ファンからの送風を行ないやすくする等、比較的手軽に導入できる割に得られる効果は高いです。
またライトと水槽の間に隙間ができるのでエサやり程度であれば、いちいちライトを移動しなくても行なえる等、日常管理を楽にすることもできます。
濾過能力のダウンについては、フィルターの強化を行うのが効果的です。具体的にはサブフィルターの設置や、エココンフォートやパワーボックスと言った安価なフィルターを補助的なフィルターとして導入する方法などです。
また少しでも濾過を効率的に作用させる為、ろ材の目詰まりを解消したり、ホースやパイプの汚れ等の流れを妨げる要因を取り除くのも効果があります。
単一でもフィルターとしての機能は十分なもの。ろ材も標準で含まれているので、購入後すぐに使用可能です。